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小生の考える歯周病発症論,克服論

 

図3−4 早期病変の模写(Schluger et a1.50))

付着上皮直下の結合組織内にリンパ球の集合がみられる.結合組織内の線維芽細胞は障害をうける.コラーゲン線維の消失と付着上皮の側方ないしは根尖側増殖がみられる GS:歯肉溝,OSE:歯肉溝上皮,AF:線維芽細胞の障害,L:リンパ球,ML:中型リンパ球,P:プラズマ細胞,・:血管,Co:コラーゲン線維 MAB:歯槽骨頂,PDL:歯根膜線維,OE:口腔上皮

(引用文献 歯周治療学 医歯薬出版 29頁)

赤印で囲んだ部位は組織再生能力の高い部位であり,それ故脆弱な部位とも言える。感染との闘いの現場であり,我々(宿主)は彼ら(免疫物質)に勝っていただくよう環境改善により援護しなければならない。

1,歯槽膿漏は歯磨きだけで治るでしょうか?
2,歯磨きの上手な人は歯槽膿漏にならないでしょうか?
3,歯槽膿漏に何故なったのでしょう?

1,歯槽膿漏は歯磨きだけで治るでしょうか?
歯周病が『歯磨きを上手にマスターし,丁寧に時間をかけて磨けば治る』というのであれば.『歯磨きの上手な人は歯周病にならない』という必要十分条件を満たしております。『3,歯槽膿漏に何故なったのでしょう?』という問いかけは問題外ということになります。

2,歯磨きの上手な人は 歯槽膿漏にならないでしょうか?
果たしてそうでしょうか? 歯科医師のすべて,歯科衛生士のすべての人々は歯周病になってはいけないという重大な課題をつきつけられています。
実はこれに自信をもって答えられる人はいないと思います。約10%の人が遺伝的に歯周病になりやすいとか,全身症状に問題ありとか,かみ合わせが悪いとか,etc

3,歯槽膿漏に 何故なったのでしょう?
歯磨きの仕方が下手だからです。 そういう体質だからです。 年だからです。 不規則な生活をするからです。

健康的な,文化的な,快適な,明るくなごやかな精神状態を保ち,規則的な過労のないバランスのとれた運動,食生活をすれば歯周病にはならないでしょう。.........こんな無茶な生活を送れる人は田舎の農家の人だけ可能か?

「年を取ると生体の免疫防御反応能が衰えますので,原因菌であるプラークの徹底的な除去が必要です。ですから 若い人以上に 丁寧なブラッシングが必要です。」....年を取れば取るほど手先は不器用になる。免疫能力は下がり放し。結局歯槽膿漏ですべての歯は失われるということか。なんか虚しい感じがする。


1.遺伝的に歯周病体質というものがあります。
2.ストレス,成人病,疲れ,睡眠不足,食生活のアンバランス,不規則な生活,スポーツ不足,現代食をやめ,玄米など添加物のないほんらいの食品を摂取すること。等々

"縄文人遺骨鑑定により縄文人も歯槽膿漏になっていた。"ということがわかっています。
この事実は上記の理由を否定しないまでも,追認出来ない。彼らは我々よりストレスの多い社会に住んでいたのか?夜遅くまでテレビゲームをしていたか?電気もないのに睡眠不足はあったのだろうか?

『現代の方が歯牙の残存率は高い。口腔衛生に関心を持つ人の方が残存率は高い』 と小生は思う。口腔清掃に関心のない中国人,アジア人,アフガン人をテレビで見ると歯のない老人が多い。開発途上国は長命でないし,年の割には老け顔が多い。

3.キスによる水平感染,母子による垂直感染説。
この説に基づけば,キスをした夫婦,恋人は共に歯周病になる?ということになる。一族郎党すべて歯周病? 患者さんを見ていると,どうもこの説はあやしい。性格が似通っていて,歯を磨かないということはあるが,奥さんの方は歯を良く磨くということもあるし,亭主の方が真面目で几帳面で歯も良く磨くということもあるので,なんとも言えない。亭主は歯槽膿漏,奥さんはポケット深さ3ミリ以下というのも結構多い。

今迄,感染論を中心として効果的な細菌殺菌消毒薬はないかの探索追求を主流としてきた。歯周病菌を同定し,それをやっつければ歯周疾患は治ると考える。感染論から考えればそう思う。

一般的な歯周病はそもそも成人病のひとつであり,成人病とは宿主の免疫機能の低下,再生能力の低下に起因するものである』という事を忘れてはいけないと思う。

そういう意味で「宿主の免疫機能の低下,再生能力の低下を補ってやるという発想はないのか?」「自然治癒力をアシストする有効な手段ではないか? そういう薬液があってもいいではないか?」という提案をしたい。

小生の考える歯周病要因

一次的要因 細菌(全ての細菌は口中に存在していた)
二次的要因 環境-プラーク量(歯磨きに対する習慣と技量,補綴物不適合,カントゥアー,歯並び)
三次的要因 宿主の免疫能,組織再生能力低下(薬物の副作用,遺伝情報老化プログラム,他の成人病の影響)

一次,三次的要因は如何ともし難いが,二次的要因である環境要因は患者さんの心構えと治療により可能である。歯石除去、歯肉切除、は歯科治療によるポケット環境改善である。歯肉切除によりポケットを浅くし歯磨きでポケットから歯垢を除きやすくすることを意図している。4ミリまでは歯ブラシによる歯肉マッサージでポケットの歯垢は取れるとされている。歯石はポケットの入り口を封鎖する格好なのでポケットを嫌気にしてしまう。ポケットに排出される滲出液、血液、上皮剥離細胞などが貯まっている。

 そもそも歯周病にならなかったら,あなたは咬合調整をするだろうか? 歯冠形態修正をするだろうか? 歯列矯正をするだろうか? 『なったからする』は対処的発想にすぎない。『咬合が悪いから,歯冠形態が悪いから, 歯列が乱れているから』『プラークがあるから』は起因にはなるが,もっと大きなトリガーである宿主の免疫機能の低下,再生能力の低下が起因である』を忘れてはいけない。原因療法は『歯周病は宿主の免疫機能の低下,再生能力の低下が起因である』を解決する事にあると小生は思う。しかし,『歯周病は宿主の免疫機能の低下』は全身の宿主の免疫機能の低下にまで言及される。それとも,限局した部位だけ免疫機能の低下が起きるのだろうか? そんな事があるのだろうか? これについて明快に書かれた文献が手元にないので閑話休題。

小生の考えている歯周病発症論

1,口腔内には善玉菌,悪玉菌全て存在している。
2,歯周病になったから歯周病菌の細菌叢に占める割合が増大した。
3,善玉菌による毒素が規定量(閾値)を超えると炎症を起こす。
この規定量(閾値)は患者の薬物による影響,遺伝的体質による影響により,上下修正される。遺伝情報による加齢的変化の影響により,下方修正される。
4,本態性歯周病は老化の一現象と捉える。つまり,歯周組織再生能力Repairの低下と考える。そしてこれは患者の薬物による影響,遺伝的体質による影響により,上下修正される。遺伝情報による加齢的変化の影響により,下方修正される。


 部位的組織再生能力の例として,髪の毛が30才で薄くなるとか,生殖機能の低下,皮膚の皺,血管,骨,脳細胞,ホルモン分泌能力etcがある。そして,その人固有の遺伝的特徴により,髪の毛フサフサで歯槽膿漏とか,髪の毛は薄いけれど歯茎はしっかりしているというように,部位的組織再生能力に違いがあり,それに起因したものと考える。

老化による免疫能力低下を除外して考える。というのは,免疫能力は口腔のみに問われるのではなく,全身で免疫能力は問われるべきであり,口腔内だけ免疫能力が落ちたとは考えにくい。髪の毛が抜けるのは感染ではない。その部位の毛母細胞の能力低下によるものである。だから,頭の毛は薄いけれど胸毛は黒々フサフサもあり得る。

治療法としては,歯周組織に関して言えば再生能力低下を高めてやれば良いということになる。これは不可能(髪の毛が可能になったから,歯周組織再生能力を高める薬も将来出来るかも知れない)。

しかし,再生能力はダウンしたけれど,ダウンした能力に見合った環境改善をしてやれば,歯周疾患発現毒素規定量(閾値)以下の環境にしてやれば,歯周病に勝てると考える。


プラークべっとりでも,再生能力が高ければ歯肉炎になることはないはずだ。現実にそういう人を見るにつけ,ラットの実験においても歯周疾患に強いラットを探す試みがあって然るべきだ。この再生能力を測る事が出来れば,歯周病罹患を推定する事が出来るし,そのような人の遺伝子情報によって今後なんらかの展開が開けるものと期待している。

まとめ  善玉菌による毒素が規定量(閾値)を超えると炎症を起こす。この規定量(閾値)は患者の薬物による影響,遺伝情報による加齢的変化の影響により,下方修正される。本態性歯周病は老化の一現象と捉える。つまり,歯周組織再生能力Repairの低下と考える。再生能力はダウンしたけれど,ダウンした能力に見合った環境改善をしてやれば,歯周疾患発現毒素規定量以下の環境にしてやれば,歯周病に勝てると推論している。

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